シンガポールの住宅・不動産事情
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住宅探し
第125回 佐藤さんの住宅探し
不動産仲介業者の山田さんと一緒にコンドミニアムを見学している佐藤さん。
前回のポイントは、
◉ もし機会があれば既に帰国した人に家を返却する際のトラブルの確認をしてみる
◉ 敷金は契約書上家を返却してから2週間以内に返還することになっているが、修理費用等の額を巡って交渉になることが多く、実際にはそれ以降の返還となる
◉ 返還金額が確定したらなるべく小切手を直接取りにいくようにする
◉ 敷金がなかなか返還されない場合には少額訴訟手続が有効
ということでした。
今回は不動産業者の山田さんが敷金回収についての法的な手段を解説いたします。
「少額訴訟ですか。訴訟ときくと結構たいへんなのではないでしょうか?」と佐藤さん。「そうですね、訴訟というと何かとんでもなく大変なように思われますが、いわゆる仲裁裁定と言った方が良いかもしれません」と山田さん。「なるほど、時々仲裁裁定としてArbitration Clauseを契約書に入れると聞いた事もありますが、それと同じようなものでしょうか?」と佐藤さん。「仲裁裁定としてArbitration Clauseを契約書に入れるケースもありますが、それはかなり本格的な訴訟に近く、弁護士などにお願いしないとできないもので、仲裁裁定とはいうものの、ほとんどまさに訴訟に近いもので、費用もかかります」と山田さん。「そうすると少額訴訟とどう違うのでしょうか?」「少額訴訟の場合にはスモールクレームコート(Small Claim Court)に申請するもので、基本的には契約に基づき請求書を送ったにもかかわらずその金銭を支払わないようなケースがほとんどですが、この敷金回収にもご利用できます」と山田さん。「どのような手続でしょうか」「まずこの制度を利用できるものは支払期限がきてから1年以内のものであること、また1件あたりの金額が1万シンガポールドルであること、と言われています」と山田さん。「敷金ですから1万ドルを超えるようなこともあると思いますが、その場合はどうすれば良いのでしょうか?」と佐藤さん。「スモールクレームコートでは基本的に1万ドルの分までの部分でしか仲裁をしてくれませんので、越える部分については対象となりません。しかし、実際に裁判所から出頭命令を受けると相手方はそのための時間を取られたくない、あるいは裁判所から呼び出しがかかる、ということでその時点で結構敷金の回収が上手く行くケースがあります」と山田さん。「なるほど、裁判所から呼び出しがかかるとちょっと大変そうですから敷金を払ってくれるのですね。どのようにこの手続をすれば良いのでしょうか」と佐藤さん。「1件当たりの申請費用は100ドルで、問題となっている状況についての簡単なレポートが必要です。」と山田さん。「なるほど、それほど難しいわけではないのですね」「そうですね、後は裁判所が出頭日時を相手方に通知して呼び出してくれます。もしこの呼び出しに応じない場合には再度出頭命令を出してくれます。さらにこの呼び出しに応じない場合には本格的な訴訟になりますが、申立人がこの手続を踏むことで相当有利になります」と山田さん。「もし相手が出頭してきたらどうなるのでしょうか」と佐藤さん。「申立人と相手方がそれぞれ一人ずつ仲裁人を交えて話しをして、仲裁人が双方の事情を聞いて提案します」と山田さん。
〜 POINT 〜
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◉ 少額訴訟は通常請求の未払いにつて利用されるが敷金の回収にも有効な手段
◉ 問題が発生してから1年以内の案件に限る
◉ 1件あたりの額は1万シンガポールドル
◉ 手続費用は1件当たり100シンガポールドル
◉ 簡単な状況のレポートが必要
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