シンガポールの住宅・不動産事情
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プロが教えるシンガポールの
住宅探し
第95回 佐藤さんの住宅探し
不動産仲介業者の山田さんと一緒にコンドミニアムを見学している佐藤さん。
今回は最近のコンドミニアムの賃貸市場について山田さんが説明します。
「最近いろいろな方から賃料が下がってきているというお話しを聞きますが本当でしょうか」と佐藤さん。「そうですね、一般的に言えば下がって来ていると言えると思います」と山田さん。「一般的に言えば、ということは賃料が下がっていないコンドミニアムもあるのでしょうか?」と佐藤さん。「一部、新しめのコンドミニアムで日本人に限らず、その他の外国人にも人気のあるコンドミニアム、特に2-3年前にできたコンドミニアムなどは場合によっては若干上がっているか、同額というケースもあります。ただ、築年数が5年を超えているような古い物件や、地下鉄工事の影響を受けている物件、オーチャードの中心にある大型のハイエンドの物件、郊外の物件などは賃料は軟調です」と山田さん。「なるほど、そうすると全てが下がっているわけではないのですね」と佐藤さん。「そうですね、これまで1997年の金融危機や、SARSの時などもそうでしたが、賃貸市場が上がり始め、あるいは下がり始めの時は必ずしも全てが同じではなく、いわゆる<まだら模様>の賃貸市場と言えると思います。さらにシンガポールの場合、これまでご説明申し上げて来ましたように家主さんが基本的には個人ですので、<自分の物件だけは他と違って資産価値がある>と思い込んでいる人が多く、前のテナントさんがまだ退去していなかったり、退去したばかりの場合、これまで通りの賃料で貸せると思っている人達が結構いらっしゃいます」と山田さん。「日本でも売買や賃貸をする場合、自分の家に思い入れがあるからそのように考える人がいますね」と佐藤さん。「そのため、家主さんはとりあえずこれまで通りの家賃で貸そうとするのですが、2ヶ月も3ヶ月も経ってなかなか決まらないことがわかってようやく賃料を下げる、ということになり、一人一人の家主さんがこのような動きをすることにより賃貸市場が徐々に下がってくる、というのが実態です」と山田さん。「そうすると、売買金額がかなり下がって来ていても住宅の賃料が下がるのは少し先になるということですね」と佐藤さん。「おっしゃるとおりです。現在不動産売買市場はだんだん冷え込んできており、値段は下がり気味ですが、この傾向が賃貸市場に出てくるのはおよそ半年くらいのタイムラグがあります。そのため、価格はすでに下がって来ているのですが、それを追いかけるようにして賃料が下がるような傾向があり、両方の市場が相互に影響し合いながら下がっていくということになります」と山田さん。「そうすると不動産の売買市場を見ていると将来の賃貸市場がわかるということですね」と佐藤さん。「そのとおりです。ですので<新しいコンドミニアムの販売が好調>というようなニュースがでると、そろそろ賃料は下げ止まる可能性があるということも言えます」
今回のポイント
○現在の賃貸市場は一般的には下がり気味。
○一部新しめの人気物件の賃料は下がっておらず、場合によっては2-3年前より上がっているものもある。
○家主さんは一般的には自分の不動産は下がっていないと思い込む傾向にある。
○不動産賃貸市場は売買市場に連動しており、価格が下がると賃料も下がるが、タイムラグが概ね6ヶ月くらいある。