シンガポールの住宅・不動産事情
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住宅探し
第93回 佐藤さんの住宅探し
不動産仲介業者の山田さんと一緒にコンドミニアムを見学している佐藤さん。
前回のポイントは、
○敷金返還を巡って相手方とトラブルがある場合には弁護士を使うより少額訴訟の手続きに入った方が効果的。
○少額訴訟費用は対象となる額により異なるが敷金返還請求の場合には数十ドル。
○裁判所には経緯説明書の提出が必要。
○この手続きの途中で相手方が妥協してくることが多いので効果的。
ということでした。
引き続き佐藤さんが不動産業者の山田さんに質問します。
「敷金の回収もなかなか大変ですね」と佐藤さん。「そうですね、敷金の返金については家主さんが直接テナントさんに返金してしまい、私どもにご連絡いただけないことがありますので、支払いが遅れている場合にはなるべく私ども不動産業者にご連絡いただけるようにお願いしています」と山田さん。「山田さんではその状況の把握はできないのでしょうか?」「家主側の不動産業者の連絡先はわかっても家主さんの連絡先は私どもには連絡されないので、なかなかフォローできないのが現状です。特にご更新をして契約賃料が減額されて敷金の差額の返金が必要な場合なども、家主さんが契約書ご署名時に差額の小切手なりを発行してくれれば良いのですが、後回しになるとフォローが結構難しいことがあります」と山田さん。「そのような場合にはどうなるのですか」と佐藤さん。「この差額返金が契約切れ間で持ち越されてしまうと、テナントさんと家主さんの銀行口座記録をさかのぼって確認しようとすると結構むずかしく、特にインターネットバンキングや通帳がない場合には調べるのに有料となり、時間がかかるとともにその費用負担の問題などが発生しややこしくなります。そのため、契約ご更新時の敷金の一部返金や契約終了にともなう敷金返金についてはお客様、テナントさんのご協力がかかせないのが実情です」と不動産業者の山田さん。「なるほど、契約書では鍵を返してから14日以内に敷金が返金されるとありますが、ちゃんと返ってくるものでしょうか?」「現実的にはいろいろ鍵を返すときに前にもご説明いたしましたが、<自然減耗分>についてもめている場合や修理費用を巡って議論がある場合には、家主さんが連絡してきた修理費用見積がかなり高く、テナントさんが納得できないことが多いため、ここでまた交渉しなくてはなりません。そのため、契約書に14日以内に敷金を返金するような取り決めがあっても、テナントさんが納得していないため返金額が確定せずに、実際には1-2ヶ月くらいかかってしまうことが多いのが現状です」と山田さん。「そのような場合に延滞利息などは要求できるのでしょうか?」「賃料については延滞利息の規定はありますが、敷金については返金についてはテナントさんと家主さんとの話し合いの中での遅延ですので、一律に延滞利息の規定を契約書に盛り込む事には無理があると考えられます。
○敷金返金状況については不動産業者単独ではなかなか確認が取りにくい。
○契約終了時の敷金の返金、契約更新時に敷金の一部返金がある場合にはテナントさんと不動産業者の双方が連絡を緊密に取り合って回収に努める必要がある。
○契約上敷金返金は14日以内に行うとあるが実際にはそれ以上かかることの方が多い。
○14日以上敷金返金に時間がかかっても延滞利息を家主側に請求することは難しい。