シンガポールの住宅・不動産事情
PRO
プロが教えるシンガポールの
住宅探し
第74回 佐藤さんの住宅探し
不動産仲介業者の山田さんと一緒にコンドミニアムを見学している佐藤さん。
前回のポイントは、
○エアコンの室内機からの水漏れはシンガポールではよくあるトラブル。
○このトラブルはエアコン設備の設置にかかわる構造的な問題から発生する。
○日系のエアコンメンテナンス会社が無難であるがローカルより高いこともあり家主はなかなか使わない。
○メンテナンスの頻度を高めることで避けることができるが、一般的にメンテナンスの頻度は3ヶ月に1回が多い。
○古いエアコンほど発生頻度が高い。
○化学洗浄を行うことにより水漏れの頻度を下げることができるが、この費用負担を巡って家主ともめやすい。
○契約段階で化学洗浄費用負担区分を家主と明確に決めておく必要がある、ということでした。
今回は山田さんが小修繕についてのお話しを佐藤さんに説明します。
「山田さん、うちの家の窓のとってや、洗濯機などが良く壊れるのですが、150ドルまでの修理はうちで全部やらないといけないのですよね?」と佐藤さん。「そうですね、シンガポールやジャカルタなど東南アジアではこの小修繕条項という変な条項が当たり前のように契約内容に含まれます」と山田さん。「日本では普通家賃にそのような修理費用は含まれて家主さんが負担してくれるのが当たり前ですよね」と佐藤さん。「日本でもテナントの過失により壊れた場合には全額テナント負担となりますが、自然に壊れたものは基本的には家主の負担となります。しかし、シンガポールでは15年位前からこの小修繕条項というものが出始めて、あっという間に当たり前の条項になってしまいました」と山田さん。「どうしてこんな理不尽と思えるような条項が当たり前になってしまったのですか」と佐藤さん。「シンガポールや周辺諸国ではコンドミニアムの賃貸は基本的に投資で、転売のために個人家主が物件を持っているケースが多く、長期保有を基本的に考えていません。考えているのはいかに高く売るか、不動産を持っている期間いかに費用を削減するか、ということしか考えていない人が多いためです」と山田さん。「でもメンテ費用をかけなければどんどん物件の価値は下がっていってしまうのではないのですか?」と佐藤さん。「そうですね、日本ではマンションは管理を買う、と言いますが、シンガポールでは物件の値段は市場が上がればどんなにひどいものでもやはり値段はあがりますし、下がる時もどんなに内装にお金をかけていても下がります。そのため、ほとんどの家主が最低限のことしかしない人が多いのです」と山田さん。「なるほど、しかしテナントにしてみれば、家主に言ってもすぐに修理をしてくれない、というのは困ったものですね」「そうです。そのため、テナントも家主が修理をしてくれないのであれば、勝手にやるけれども、高額の場合には家主負担としてくれ、ということでこのような条項が広く広がってしまった、という経緯があります」と佐藤さん。
○現在の小修繕条項は15年位前から急速に広がった条項。
○自然に壊れたものでも一定額(150ドルが多い)まではテナント負担。
○家主は物件の状態にあまり関心を払わない転売目的の家主がほとんど。
○これまでは物件の状態の善し悪しより市況動向により不動産価格が上下している。
(次回も小修繕条項にかかわるお話しです)