ホーム > プロが教えるシンガポールの住宅探し

シンガポールの住宅・不動産事情

PRO プロが教えるシンガポールの
住宅探し

  • シンガポールの住宅・不動産事情

  • Selection Criteria

第48回 佐藤さんの住宅探し(物件返却時の注意点)

不動産仲介業者の山田さんと一緒にコンドミニアムを見学している佐藤さん。

前回のポイントは、

○同時に二つの物件にオファーを入れることは得策ではない。

○まだ不動産仲介業者の中にはプロ意識のかける人が結構いる。

○家主さん側に不動産仲介業者がいる場合には彼らの質についても注意を払う必要がある。

○契約交渉にあったって理由なく回答が遅れる場合には何か家主側に問題がある。

今回は佐藤さんが不動産業者の山田さんに退去の時の注意点を聞きます。

「そろそろ私の知り合いでもこの時期には何人かが日本に帰国する人がいますが、家主さんに住宅を返す時にはどんな点に注意したら良いのでしょうか」と佐藤さん。「基本的には原状復帰といって、借りた時の最初の状態に戻さなくてはいけません」と山田さん。「借りた時の最初の状態といっても、もし新築未入居の物件を借りた時には新築の状態になんて戻すことはできませんよね」と佐藤さん。「そのとおりです。日本でもそうですが、賃料を支払うということは、その物件の自然減耗分、つまり普通に使っていて傷む分には賃料の中に含まれていると解釈されています。この自然減耗分を英語ではfear wear and tearと言います。問題はどのような状態を自然減耗分とするかです。これは非常に難しい問題で、主観的に判断されるために明確な基準がありません。日本では国土交通省が参考基準を示していますが、それでも問題が残ります。例えば、きず一つついていないウッディフロアのベッドルームについている傷について、どの部分が自然減耗分か、どの程度から入居者責任を問われるかについては家主さんとテナントさんとの間の話し合いで決着をつける以外に方法はありません」と山田さん。「なかなか難しそうですね」と佐藤さん。「ですから、まず最初に住宅を選ぶ時にはできるかぎり鷹揚そうな家主さんを選ぶことや、入居期間中に家主さんとの関係を良好に保つことで、最後に住宅をスムーズに家主さんに返却することができるので、家主さんがどのような人であるかに十分注意を払わなくてはなりません。当然住宅を選ぶ場合には間取りや立地が大事ですが、それと同じかそれ以上に家主さんがどのような人であるかを注意しないと、最後に住宅を返却すると時にモメます」と山田さん。「なるべくモメないようにするためには、どうしたら良いのでしょうか」と佐藤さん。「以前お話いたしましたように、住宅の最初の状態をしっかりと書面に記録し、家主さん、テナントさんでその状態を確認することがスタートポイントです。大抵最初の1ヶ月だけがテナントの免責期間として与えられていますので、この期間にしっかりと原状を確認しておくことが必要です」と山田さん。「そうですね、私の場合は佐藤さんに確認してもらい、家主さんに記録を出してもらっていますので大丈夫ですが、実際に住宅を家主さんに返す前に何かやっておくことはありますか」と佐藤さん。「まず基本的なことは清掃です。御自身で清掃されることもできますが、プロの清掃業者を雇って住宅を家主さんに引き渡す直前に終了するような段取りがベストと言えます」と山田さん。「それはどうしてですか」と佐藤さん。「家主さんが見に来た時に、まずテナントさんがきちっとやっていることを示すことによって良い印象を与えます。また、家主さんが住宅を見て回った時に、清掃が十分でないと言われた部分をその場ですぐ業者さんにやってもらうことができるからです」と山田さん。「なるほど、自分で清掃するわけにはいかないのでしょうか」と佐藤さん(次回に続く)。

ポイント

○普通に使っていたという基準(自然減耗分)に明確な基準がないため家主さんとテナントさんでモメやすい。
○最初に住宅を選ぶ時に家主さんがどのような人であるかをしっかり確認することで将来のトラブルを極小化する。
○住宅の引き渡しの前にはしっかり清掃を行う。できればプロの清掃業者が望ましい。